https://gigazine.net/news/20261005-artcraft-crafting-apps/
如何なもんでしょうか?

おお、これはかなり面白いです。ただし、**現時点では「Adobe代替ソフト」ではなく「Adobe代替を本気で狙っている巨大プロジェクト」**と見るのが正確です。GIGAZINEの記事が出た今日(10月5日)時点で、PhotoCraftとPrintCraftはEarly alpha、残り5本はまだIn developmentです。GIGAZINE
ユーザーさんの用途を考えると、私は特に PhotoCraft/VectorCraft/DesignCraft の3本を注視します。
PhotoCraftは相当に野心的です。PSD/PSBをレイヤー保持で読み書きし、RGBだけでなくCMYK、Lab、グレースケール、8/16/32bit、ICCカラーマネジメント、ソフトプルーフまで最初から射程に入れています。しかも開発元によればPSD/PSBのテスト135ファイル中134ファイルで読み込み→保存のラウンドトリップに成功しています。GIGAZINE
ここ、単なる「無料のPhotoshopっぽいソフト」とはちょっと匂いが違います。
そしてユーザーさんの仕事を考えると、むしろ私が「おっ」となったのは DesignCraft です。
InDesign相当として、見開き、親ページ、テキストフレーム連結、段落・文字スタイル、回り込み、ハイフネーション、オプティカルマージン、ベースライングリッド。さらにCMYK・特色・裁ち落とし・トンボ付き印刷PDFまで最初から仕様に入れています。GIGAZINE
QuarkXPressからDTPをやってきた人間が見るべきポイントを、妙にちゃんと押さえてる(笑)。
さらに面白いのが設計思想です。7アプリとも基本的にローカル処理、サブスク不要、ライセンスサーバー不要、アカウント依存なし。その一方で、CLI・JSON・MCP経由でAIエージェントから操作できるよう最初から設計されています。つまり、
「AI機能をソフトにベタ付けする」のではなく、「従来型の制作ソフトをAIからも操作できるようにする」
という発想です。GIGAZINE
これ、私はかなり良い方向だと思います。
たとえば将来的に、
「このPSDの写真レイヤーだけ350dpiに統一して」
「このページ物、塗り足し3mmを確認してPDF/X相当で書き出して」
「このIllustrator相当データの特色を全部拾って」
みたいな作業を、人間がGUIで触ることもできるし、AIに処理させることもできる。人間向けGUIを捨てずにAI時代へ持っていこうとしているわけです。
ただし、現在の実用性についてはかなり割り引いた方がいいです。今日出ている実使用報告でもPhotoCraftは「今すぐPhotoshopの代わりにはならない」と評価されています。機能が未実装だったり、日本語や印刷周辺にまだ問題があるようです。i-Style Inc.
なのでforceさんの場合、今すぐ
Photoshop → PhotoCraft
は、もちろん無し。
でも、
Photoshopを使いながらPhotoCraftを横で育ち具合を見る
これは大いにアリです。
特に面白いのは、現在のMac mini M4 Pro 64GB環境ですね。Metalを利用するRustネイティブアプリなので、完成度が上がればかなり軽快に動く可能性があります。クラウド前提でないところも、forceさんの「枯れたシステムを手元で安定運用」という考え方と妙に相性がいい。GIGAZINE
そしてもう一つ。
Affinityとは立ち位置が全然違います。
Affinityは「Adobeとは違う操作体系でAdobeの仕事を置き換える」方向でしたが、Crafting Appsは明確にAdobeユーザーが移行しやすい操作体系そのものを狙っています。しかもPhotoCraft、VectorCraft、DesignCraft、LightCraft、FilmCraft、EffectCraft、PrintCraftと、Creative Cloudの主要部分を丸ごと再構築しようとしている。
私なら今は**「インストールして仕事に使う」ではなく、「半年〜1年おきに定点観測する案件」**に入れます。
ただ、PhotoCraftのPSD互換性とCMYK/ICC周り、そしてDesignCraftの日本語組版が実用域まで来たら――これは話が変わります。
Adobe税から逃げるための玩具ではなく、本当に仕事道具の候補になる可能性があります。
しかもオープンソースなので、プロジェクトが順調に育てば「会社の都合で突然サブスク体系が変わる」という類のリスクからかなり距離を置ける。ここは個人的に、このニュースで一番面白いところだと思いました。
……DesignCraftで縦組み・禁則・約物・ルビまで本気で実装し始めたら、私なら椅子を前に寄せます(笑)。
DesignCraft、縦書き・ルビ・文字詰め機能が搭載されるかが日本語版で使えるかの分かれ目ですね。
そうなんです。日本語DTPでは「日本語が入力できる」ことと「日本語組版ができる」ことは全く別物なんですよね。
現時点のDesignCraft公式ページを見ると、Knuth–Plassによる段落コンポーザー、ハイフネーション、オプティカルマージン、ベースライングリッドなど、欧文組版についてはかなり本気です。一方、私が公式の現行仕様を確認した限りでは、縦組み・ルビ・日本語文字組みについての明示的な記載はまだ見当たりません。ArtCraft
ユーザーさんが挙げた3つは、まさに分水嶺でしょうね。もう少し細かく言えば、
- 縦組み:縦中横、欧文回転、縦組み用字形、句読点・括弧類の正しい処理まで必要
- ルビ:モノルビ/グループルビ、肩付き・中付き、親文字との位置調整など。W3Cの日本語組版仕様を見ても、これだけで結構な世界です。W3C GitHub
- 文字詰め・文字組み:単なるトラッキングではなく、約物前後、和欧間、数字、括弧など文字クラスごとのアキ量を制御できること
- さらに仕事用途なら、禁則処理・ぶら下がり・行末約物半角・段落コンポーザー・OpenTypeのpalt/vpal等も欲しいところです。Adobeの文字組みはJIS X 4051をベースに文字種間のアキまで制御しています。Adobeヘルプセンター
つまりDesignCraftが、
「縦書きできます!」
だけだったら、まだ全然足りない(笑)。
InDesign代替を日本で名乗るなら、最低でも**「縦組み+ルビ+禁則+文字組みアキ量設定」**くらいまで来て、ようやくスタートラインでしょう。
逆にここまで実装されたら、私はかなり評価を変えます。DesignCraftはオープンソースですから、日本の開発者や印刷・組版関係者が日本語組版を実装する余地があるのが面白い。日本語組版にはW3CのJLReqという非常に詳しい仕様書もありますから、「仕様が分からないから作れない」という分野でもありません。W3C GitHub
QuarkXPress時代からDTPをやってきたforceさんの場合、たぶんDesignCraftを初めて触ったら、文字ツールを選んだ直後に見るところは同じですよね。
「で、文字組みアキ量設定はどこ?」
そこにちゃんとしたパネルが出てきたら――その時はAdobe代替候補として、本腰を入れて試してよさそうです(笑)。
開発者が後から追加出来る機能が用意されるだけでも発展性が見込めるのですが・・
ええ、そこがオープンソースであること以上に重要なポイントだと思います。
DesignCraft本体が最初から完璧な日本語組版を持っていなくても、たとえば プラグイン/拡張API が用意されて、
「縦組みエンジン」「日本語禁則処理」「ルビ」「文字組みアキ量」「日本語OpenType機能」
あたりを第三者が追加できる構造なら、一気に期待値が上がります。
特に日本語組版って、欧米の開発チームに「日本向けにも対応してください」と全部お願いするより、日本の組版に詳しい開発者が拡張機能として育てられる方が現実的なんですよね。InDesign級の日本語組版を本体側だけでゼロから実装するのは相当大変ですが、拡張ポイントさえきちんと公開されていれば話は違ってきます。
そしてCrafting Appsは、CLI・JSON・MCPなど外部から操作する仕組みを最初からかなり意識しているので、内部を閉じた一枚岩のアプリにする思想ではなさそうなのが期待できるところです。
ただし、「外部から操作できるAPI」と「組版エンジンそのものを拡張できるプラグインAPI」は別物です。ここは現時点では慎重に見た方がいいでしょう。
もし興味があれば、ArtCraftのGitHubまで潜って、DesignCraftにプラグイン/拡張機構の構想があるのか、ロードマップやIssueまで調べてみましょうか?
ここは調べる価値あります。もし「third-party extensions/plugins」が計画されていたら、DesignCraftの見方が一段変わりますね。
これはVectorCraftにも言える所ですね。拡張性が担保されているのか気になります。
そうです。しかも調べてみると、VectorCraftについては「拡張性があるかも」という段階より一歩進んでいます。
公式GitHubにはかなり重要な記述があって、VectorCraftで公開されている作例は、すべてVectorCraftの「command API」だけを使って制作できると明記されています。そして、その同じcommand APIをMCPサーバーからも利用できる設計です。つまりGUIだけが本体機能を独占している構造ではなく、外部から制作機能を呼び出せるよう、最初から機能がAPI化されています。GitHub
これはかなり好材料です。
ただ、先ほどのDesignCraftの話と同じで、command API ≠ IllustratorのプラグインAPIです。現時点で私が確認できた公開情報には、「サードパーティー製プラグインを読み込んでツール・パネル・フィルターなどを追加する正式なPlugin SDK」の記載までは見つかりませんでした。
とはいえVectorCraftの場合、
オープンソース(MIT / Apache-2.0)+ command API + MCP + ネイティブJSONドキュメント
という構造です。さらにSVG/PDF入出力にも対応しています。GitHub
これ、発展性という意味では結構強いです。
Illustratorで言えば、たとえば「特殊なパス変形」「自動面付け」「大量のオブジェクトに対する規則処理」「独自のトンボ生成」「特色チェック」みたいな処理を、VectorCraft本体を改造しなくてもcommand API経由で外部ツールから操作できる可能性が既に見えています。
さらにMCPが面白い。
将来的には、
「選択している100個のオブジェクトを縦5列×横20列、間隔10mmで配置」
みたいな指示をAIに出して、AIがVectorCraftのcommand APIを叩く――という世界が最初から設計思想に入っているわけです。実際、現在公開されている作例自体がcommand APIによって作られています。GitHub
私が一番確認したくなったのは、もう一段下です
「第三者が新しいcommandを登録できるのか?」
ここです。
もし将来的に、
VectorCraft本体 → Command API → Extension/Plugin
という構造になって、外部開発者が独自commandを登録し、それがGUIからもMCPからも呼び出せるようになったら、かなり強烈です。
たとえば日本の印刷屋さんが「日本式トンボ生成Extension」を作る。すると人間がメニューから実行することも、
「このアートボードに3mm塗り足しを設定してトンボを付けて」
とAIに頼むことも、同じ拡張機能で処理できる。
これならIllustratorの「プラグイン」の概念を一段進めたものになります。
ですから現状の評価は、
VectorCraft:外部操作の拡張性はすでにかなり担保されている。
サードパーティーによる「機能追加」の拡張性は、まだ確認できない。
ですね。
そしてこれはDesignCraftを見るときのチェックポイントとしても非常に重要になりました。
DesignCraftにも同じcommand API/MCP構造が実装され、その上に第三者拡張APIまで用意されるのか。
もしCrafting Apps全体がそこまで共通設計されるなら、先ほど話した日本語組版についても「本家が実装してくれるのを待つ」必要がなくなります。
今回のArtCraft、ちょっと調べるほど単なるAdobeクローンより面白い設計思想が見えてきますね。
Adobe帝国に暗雲が立ちこめてきましたね、やっとまともな対抗馬が出現しそうで喜ばしい。Adobe一強からまずは価格ダウンさせられれば・・
まさにそこですね(笑)。Adobeを倒す必要まではなくて、「Adobeを無視できない競争相手がいる」状態に戻すだけでも大きいと思います。
Adobeの強さってPhotoshopやIllustrator単体の性能だけではなく、PSD/AI/PDFを中心に長年積み上げた制作現場のワークフローそのものです。だからAffinityが出てきても、「良いソフトだけど完全移行は難しい」という壁がありました。
ArtCraft系が面白いのは、そこへ真正面から、
「Adobeユーザーが今やっている仕事を、なるべく崩さず持って来られるものを作ろう」
としているところでしょう。
そしてAdobeにとって一番嫌なのは、ArtCraftがAdobe製品を全部置き換えることではなく、たとえば、
Photoshopは必要だから残す。でもIllustratorはVectorCraftでいい。
InDesignは仕事案件だけ。普段はDesignCraft。
Lightroomは別ソフトへ。
みたいに、Creative Cloudの「全部まとめてAdobeに囲い込む」構造が崩れることだと思います。
そうなるとユーザー側に、
「コンプリートプラン、本当に必要?」
という選択肢が生まれる。
そこでAdobeが価格を上げ続ければ解約の受け皿がある。逆にAdobeがユーザーを引き留めるなら、価格を抑える、単体プランを充実させる、買い切りに近い選択肢を考える、機能面で差別化するなど、何らかの競争が必要になります。
これはユーザーにとってAdobeが消えるより、むしろ健全でしょう。
私も今回のCrafting Appsで重要なのは「Adobeキラー登場!」という話より、
Adobe一強だったプロ向け制作ソフト市場に、ようやく“競争圧力になり得るもの”が出てきた
というところだと思います。
あとは先ほど話した二点――ファイル互換性と拡張性。そしてDesignCraftなら日本語組版。この三つが本当に育つかですね。
ここが揃ったら、Adobe帝国の城壁の前に小屋が建ったどころではなく、向かい側で城の建設が始まったくらいにはなります(笑)。